声優がアニメの枠を飛び出し、音楽ライブや舞台で「顔の見える存在」として活躍している。
なかでもここ数年は若手の男性声優が注目され、出演イベントには多くの女性ファンが集まり、特集した雑誌の売り上げも好調だ。

　有料ＣＳチャンネル「ファミリー劇場」では今年２月から、バラエティー番組「声優男子ですが…？　シーズン２」（隔週土曜午後７時２０分～）を放送している。
昨年放送されて人気になった番組の続編で、１０～３０代の若手人気声優７人が出演。
野球盤で遊びながら実況のアナウンサーや選手になりきってみたり、苦手な動物とふれあったり、声優たちが企画したコーナーが目玉だ。

　５月７日放送分では、番組中で「登山部」を結成した白井悠介、上村祐翔、梅原裕一郎、小林裕介の４人が、突起物がついた壁をロープを使わずに登るボルダリングを体験。
声優として出演するアニメの役とは一切関係なく、イケメン声優たちが笑いも交えながら、和気あいあいと番組が進んでいく。

　人気アニメ「アルスラーン戦記」（２０１５年、ＴＢＳ系）で主役の声を演じた小林裕介は、「もともと人前に出るのが苦手だったので、俳優ではなく声優の道を選んだ」という。
だが、ボルダリングでは中学時代に器械体操をしていた経験から運動神経の良さを披露。
「顔を出すのは最初は戸惑ったけど、周りも自由にやっているから僕もいつの間にか素を出せるようになった」と話す。

　番組を企画した東北新社企画制作部の佐々木あづささんは、５年ほど前から男性声優が出演する音楽ライブや朗読劇などが開かれ、多くの女性ファンが集まる様子に注目してきた。
「声の表現力を生かしてアニメ以外の活躍の場が広がり、イベントで『会える』機会も増えている。等身大の素顔に近づける企画を続けていきたい」と話す。

　「舞台裏」の存在だった声優個人にスポットが当たるようになったのは、まず女性声優だった。アニメの主題歌を歌うなどして注目され、０９年には声優の水樹奈々がＮＨＫ紅白歌合戦に出場。
月刊誌「声優グランプリ」（主婦の友インフォス情報社）の広島順二編集長によると、１９９４年の創刊当初、同誌の読者は男性が中心で、表紙も女性声優ばかりだったという。

　男性声優の人気について広島さんは「ファンは以前からいたが、人気に火がついたのはここ５年くらいでは」とみる。
同誌では０７年の表紙に初めて男性声優が単独で登場。昨年度は計１２号のうち７号の表紙を男性が飾った。
今年の４月号では、付録に５００人以上の男性声優のプロフィルを紹介する「声優名鑑２０１６男性編」をつけたところ、初版の３万部がすぐ品切れに。
６千部を増刷した。

　広島さんは、背景にユーチューブなどの動画サイトの浸透があると指摘。気になる声優を簡単に調べられ、声優自身の映像もすぐに見られる。
「ツイッターなどのＳＮＳで、同じ興味や関心を気軽に共有できるようになったことも、人気拡大に大きく影響している」と話す。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12370000.html

追記
※ボルダリングに挑戦する（左から）小林裕介、上村祐翔、白井悠介、梅原裕一

顔よりも演技で魅了してくれ